加齢黄斑変性

網膜の中心『黄斑』の老化で視力が低下

網膜の中央が黄斑(おうはん)

加齢黄斑変性は、網膜(カメラのフィルムにあたる組織)の黄斑(おうはん)というところに異常な老化現象が起こり、視機能(視力や視野)が低下してくる病気です。黄斑は網膜のほぼ中央にあり、ほかの部分の網膜に比べて視機能が高く、物を見る要の部分です。新聞を読むとき、読み取る文字は常に視野の中央の黄斑で読まれていて、そこから数文字でも外れたところにある文字は、相当読みづらいものです。

加齢黄斑変性の症状とは?

一番見たいところが見えなくなる

  • 視野の中央がよく見えない
  • ゆがむ
  • 暗く見える など

最初は片方の眼に起きて程度も軽いために、患者さん本人は見過ごしていることも少なくありません。しかし、徐々に、病型によっては急速に、視力が低下してしまいます。通常、中央以外の視野は保たれ、全く光を失ってしまうことはまれですが、見たいところが見えず読みたい文字が読めないという、とても不便な状態になってしまいます。

欧米では中途失明原因のトップが加齢黄斑変性です。日本でも増えていて、2004年には身体障がい者手帳の取得原因の4位になりました。患者さんのほとんどは60歳以上で、女性より男性に多いという特徴があります。また、喫煙者に多いことが知られています。

なぜ黄斑部の変性が発生するのでしょうか?

網膜細胞は光を見て機能している限り新陳代謝を繰り返しています。新陳代謝で生じる老廃物は、若いうちは網膜と脈絡膜の間にある網膜色素上皮内で消化されて消えてしまいます。しかし、加齢により網膜色素上皮の働きが低下すると、消化されない老廃物がブルッフ膜(網膜色素上皮の下にあり、脈絡膜との境目にある膜)に溜まります。

老廃物が蓄積することで、それに対して慢性の弱い炎症が持続します。するとその炎症を鎮めようと、血管内皮増殖因子(VEGF)の放出が促され、その結果、脈絡膜から新生血管が生えてくるのです。新生血管の発生により網膜内や網膜の下に出血や浮腫(水ぶくれ)が生じ、黄斑の機能が低下します。

予防

①異常を自分で見つけるように心掛ける

加齢黄斑変性から視力を守るカギは、早期発見です。進行の早い滲出型でも、中心窩に達していない小さな新生血管を早期に発見できれば、効果的な治療が行え、視機能の維持・改善の可能性が高くなります。
アムスラーチャートでのセルフチェックは早期発見や病態悪化に効果的です。

②たばこはやめる

たばこが加齢黄斑変性の危険因子であることがわかっています。しかも15年以上禁煙を続けないと喫煙の悪影響がなくならないと言われますので、今すぐにでも禁煙したほうがよいと思われます。

③食生活 亜鉛と抗酸化ビタミンを多めに摂る

アメリカで行われた調査研究で、加齢黄斑変性になりやすい黄斑所見のある人が亜鉛と抗酸化ビタミンを大量に摂ると、加齢黄斑変性の発病率が低くなることがわかりました。亜鉛が豊富な食材(カキなど)や新鮮な濃緑色野菜をなるべく多く食べるようにしましょう。また、ホウレン草やケールに含まれているルテインも有効です。ビタミンC、ビタミンE、βカロテン、ルテイン、亜鉛などを含むサプリメントも予防に効果があります。

④サングラスなどで日光から目を守る

強い光、とくに太陽光の中の青い光が網膜に当たると、網膜に有毒物質が溜まりやすくなります。サングラスやツバ付きの帽子で目を守りましょう。サングラスは、紫外線と青色光をカットするタイプが眼の保護効果が高いです。

治療

①抗VEGF薬による治療

抗VEGF薬は、黄斑変性を生じさせるVEGFをブロックすることで新生血管の発育を抑える薬です。新生血管の発育が止まり、視機能が維持されるだけでなく、出血や滲出物の吸収とともに視機能の回復が期待できます。現在、滲出型加齢黄斑変性の新生血管に対して抗VEGF薬は、第一選択の治療法になっています。

実際の治療方法

点眼麻酔の後、抗VEGF薬を眼球内に注射します。痛みはなく1-2分で処置は終了します。薬は眼球内にしばらくとどまり、効果が数週間持続します。

継続治療が必要

1回で新生血管の活動性が治まることもありますが、治まらない場合は病状に応じて追加投与や、定期的な投与が必要な場合があります。

②レーザー治療 光線力学療法 ※1

光に対する感受性を持つ薬を肘の静脈から点滴し、その薬が中心窩にある新生血管に到達したとき特殊なレーザー光を病変部に照射する治療です。レーザーによりお薬が活性化し、新生血管の血管を閉塞させることができます。

※1 適応の方は、入院施設のある大学病院などに紹介させていただきます。